ちょっと前にも書いたけれど、E-30が販売的に振るわなかったと思われる理由をまとめると、次のような感じだろうか。
1、E-3から防塵防滴を抜きました、という程度の地味めな印象
2、差別化要素が、ハイアマチュア以上には支持されにくい「アートフィルター」
3、なのに、初値がE-3と並ぶ価格
要は、既存のE-3ユーザーに取っては追加で買うほどのボディではなく、潜在的なE-3ユーザーは「同じ価格出すならE-3を買うよ」と考えてしまうという、微妙すぎるポジショニングが原因だったと思う。そしてもちろん、E-30リリース後、程なくしてE-620がリリースされたことも、E-30の買い足を鈍らせた要因になった。
ひるがえって、26日発表のキヤノン60Dの新機軸を見ると、、、
・バリアングル液晶搭載
・アートフィルター搭載
・マルチアスペクト可能
・ファインダー内に表示できる電子水準器搭載
・ボディをエンジニアプラスティック化し、小型化・軽量化
と「これなんてE-30?」と言いたくなるほどコンセプトが似ている。E-30にできないのは、動画とカメラ内RAW現像だろうか? 一部では「またキヤノンお得意の“出し惜しみ”か・・・」という声もあるようだ。しかも60Dの上位には(より高性能な)7Dが控えており、価格はほぼ同じであり、かつ発売直後からキャッシュバックキャンペーンが始まるというマーケティング上の背景まで、E-30のリリース当時に酷似している。普通に考えれば、7Dを買う人が多いのではないか?(ところでアートフィルターという名称は、いくらオリンパスのTMでないにせよ、もうちょっと他に付けようはなかったのだろうか・・・)
だからといって僕は、60Dをdisるつもりは全く無い。むしろキヤノンのラインアップ的に、ちょうど穴を埋める形になってよかったと思う。もし60Dが販売上、振るわなくても、60Dによって埋められた穴によりハッピーな思いをするユーザーが必ずいる。製品ポートフォリオ上、こういった横綱相撲を展開できるのは、キヤノンやはり“二強”なだけあるなと感じる。オリンパスだったら、カニバってしまう製品ラインは継続されず、すぐに消えてしまうもの。
AF機構が強化されなかったことと、高画素化の弊害で連射速度が落ちたのは残念だったけれど、50D対比で改良されたペンタプリズムとバリアングル液晶、そしてファインダー内水準器は、ベターなユーザー体験をもたらすはず。特に今後価格がこなれて、Kissと7Dの間でお得感が出てくればなおさらだ。1D系や、5Dmk2のサブとしても、いいだろう(7Dはサブ機にするには大げさ過ぎる)。そもそもキヤノンにとっては「既存の50Dユーザーは7Dを買ってね」というところなんだろう。だからこそ60Dのキャッチフレーズが「趣味なら、本気で。」なのだと思う。これは50Dではなく、Kissを使っているユーザー向けのワーディングだ。メモリカードをCFからSDにしたのも、Kissからの移行組を意識してのことだろうか。
キヤノンユーザーの中からも鬼子扱いされる向きもあるかもしれない、ポジショニングが微妙すぎる60Dだけれど、E-30を使っている僕は、60Dを選ぶ人の理由も少し分かる(気がする)。
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